皮膚の”トラブル対応”から “一生の健康管理”へ

健康管理センターでの、皮膚科アプローチとは?

犬・猫の皮膚は、もっとも大きな臓器であり、健康状態の鏡です。

私たちは、単なる「皮膚科治療」ではなく、全身の健康とライフスタイルを含めた”健康管理型の皮膚アプローチ”を行っています。

皮膚トラブルは、皮膚だけの病気と捉えられがちでありますが、じつは

  • アレルギー
  • 甲状腺・副腎疾患
  • 腸内環境(マイクロバイオーム)
  • 生活環境のストレス
  • 栄養バランス

など、身体の内外のバランスが崩れた結果としても起こります。

そのため当院では、「皮膚を診る=全身を診る」という視点で診療を進めます。

実施するチェック例

  • 皮膚・被毛の状態観察
  • アレルギー評価(食物・環境)IgE、リンパ球活性の評価
  • 腸内環境の評価(便検査・マイクロバイオーム)
  • ホルモン異常の血液検査
  • 栄養バランス生活ヒアリング
  • スキンケア歴やシャンプー剤の評価

「原因」ではなく「体質」を改善する」 これが健康管理センターの目指している皮膚治療です。

予防重視のスキンケアプログラム

人医療でも世界の潮流として、アトピーや乾燥肌は”未病”の段階で保湿スキンケアを開始することが標準になっています。

犬猫でも、

  • バリア機能低下
  • 乾燥
  • 生後早期のスキンケア

が、アトピー発症リスク低減に役立つという研究が増えています。

当院の予防スキンケア

  • 定期的な皮膚・被毛チェック
  • バリア機能を守る保湿剤指導
  • 毛並み改善のブラッシング・栄養指導
  • 季節別(春の花粉、梅雨の湿気、秋の乾燥)ケアプラン
  • 子犬・子猫の「ベビー皮膚ケア指導」
  • シニア期の乾燥対策

子犬期の早期スキンケアはアトピー発症を減らす可能性が示されています

アレルギー×栄養管理

食事で皮膚を整える

皮膚は「食べたもので作られる臓器」
人医療でも、腸・免疫・皮膚をつなぐ「Gut-Skin Axis(腸–皮膚軸)」の研究が非常に進んでいます。

犬猫でも同じ概念が注目されており、

  • 食物アレルギー
  • 腸内環境の乱れ
  • 炎症性皮膚疾患

が深く関連していることが示されています。

当院の食事アプローチ

  • 療法食の選択肢(加水分解・新奇タンパク・腸内環境重視)
  • アレルギー検査結果に基づいた食事調整
  • 炎症を抑えるオメガ3脂肪酸などの栄養指導
  • おやつの選び方ガイド
  • 食事の「負担度」を点数化するアプリ連動型カウンセリング

食べる→消化→吸収→皮膚に反映

一般的なプレミアムフード

良質な食事として販売されている。 人間の食事としてのイメージは、グルメサイトでおすすめされているお料理。 健康食というよりも、おいしさなどをメインにされているものもある。

療法食

目的に応じた成分を加えたり、除去したりするもの。 疾患の治療目的で使用する。おいしさも大切だが、それよりも疾患の治療を目的とします。

生活環境ケアもセットでサポート

アレルギー管理では、治療の50%が「環境コントロール」です。

推奨するご家庭での取り組み

  • 花粉季節の帰宅後のタオル拭き
  • ベッド・カーペット選び(低刺激素材)
  • 加湿器/除湿で環境湿度の最適化
  • シャンプー頻度の最適化
  • 運動・ストレスケア

「ストレスと皮膚炎の関連」も重要と考えられています。
遊び・睡眠環境の整備が治療に組み込まれています。

犬や猫の皮膚には、実はたくさんの菌(細菌や酵母)が住んでいます。
これは「皮膚マイクロバイオーム(皮膚に住む微生物の集まり)」と呼ばれます。
健康な皮膚では多様な菌がバランスよく共存し、皮膚を守ってくれています。
この“バランス”がとても大事なんです。

10年ほど前までは、
「悪そうな菌が増えている → 抗生物質で減らす」
という考え方が皮膚治療の中心でした。
しかし、近年の研究で分かってきたのは…
菌が増えていることが“病気の原因”ではなく、
皮膚環境や体質の問題で“菌のバランスが崩れやすい状態”になっている、ということ。

つまり
「菌が悪い」のではなく
「皮膚のバリアや体質に問題があって、菌のバランスが崩れやすい」
という考え方が主流になってきています。

最近の犬猫の研究では、以下のことが繰り返し報告されています。
皮膚炎の子は、健康な子に比べて菌の種類(多様性)が少なくなること
特定の菌(特に Staphylococcus など)が相対的に増えやすいこと。

ここで重要なのは特定の菌が見つかったから病気になるのではなく、
皮膚のバリアが弱ったり、アレルギー体質があると、
“バランスが崩れやすくなる”ということ。

菌そのものを“敵”とみなす時代から、
「菌のバランスが乱れた状態」=病気が悪化しやすい状態
という考え方に変わってきました。

抗生物質を使うと、一時的に症状が良くなることはあります。

しかし同時に、

  • 皮膚の“良い菌”も減ってしまう
  • バリア機能が改善しないままだと、また同じ症状が起きる
  • 耐性菌のリスクが高まる

といった問題もあります。

そのため、現在の獣医皮膚科では「必要な時にだけ、短期間で使う」という方針が世界的にも基本です。

最新の皮膚治療は、次の三本柱で成り立っています。

 ①皮膚バリアを整える

保湿、脂質補給、シャンプー選びなど

→ 皮膚を強くし、菌のバランスが崩れにくい環境にする

 ②症状の根本原因(基礎疾患)を見つける

アレルギー、アトピー、ホルモン異常、乾燥、環境要因など

→ “バランスを崩す元”を見つけて治療する

③必要時のみ、ポイントで薬を使う

抗生物質・抗真菌薬・抗炎症薬などは

「最小限・最適量」で使用し、長期に頼らない方針

  • 菌のバランスを整える
  • 皮膚バリアを強くする
  • バランスを崩す“元の原因”を見つける

この3つです。

その結果、抗生物質を使わなくても症状が安定する子が増えてきています。

皮膚のトラブルは、菌が悪さをしているのではなく、
皮膚のバリアや体質の問題で菌のバランスが崩れてしまうことで起こります。

だから、治療の中心は『菌を殺す』ことではなく、『皮膚を強くする』『バランスを整える』『原因を探す』ことに変わってきています。必要な時だけ薬を使いながら、皮膚が本来持っている健康な状態を取り戻す治療に、切り替わってきています。