ペットの慢性疾患を長く付き合うための予防医療ガイド

ワンちゃん、ネコちゃんが慢性疾患を抱えていても、
日々のケアや適切な予防医療によって、病気の進行を遅らせ快適に暮らすことは可能です。

特に立川市のように都市部で生活するペットは、生活環境やライフスタイルの影響も受けやすいため、
飼い主さんと動物病院が協力して「予防と管理」を重ねることが大切です。
本記事では、獣医療の観点から慢性疾患に向き合うためのポイントをご紹介します。

  1. 定期的な健康チェックで「早め発見・早め対策」
    • 検査の意義:慢性腎臓病や心疾患、糖尿病、甲状腺疾患などは初期症状が乏しく、発見が遅れると治療の選択肢が限られます。
    • 推奨頻度:シニア期(犬猫ともに7歳以上)は半年に1回の健康診断を推奨。
           若齢でも遺伝的リスクがある犬種・猫種は早めから定期チェックを。
    • 最新の検査:血液検査に加え、SDMA(猫の早期腎不全マーカー)や心臓病マーカー・心エコー・血圧測定なども有効です。
  2. 食事管理で慢性疾患をコントロール
    • 腎臓病:リン・ナトリウムを制限し、良質なタンパクを含む療法食が基本。
          腎臓病のステージに合わせて、最適な食事が変わります。
    • 心疾患:ナトリウム制限やタウリン・カルニチン補給が推奨されることも。
           猫の肥大型心筋症では、食事により進行予防を期待できる食事もあります。
    • 肥満:高繊維・低カロリー食に切り替え、体重減少プログラムを実施。
          カロリー制限が必要ですが、今与えている食事を減らすだけだと、栄養のバランスが崩れてしまいます。
    👉 食事は「病気ごとに選択する事」が鍵。動物病院で栄養士・獣医師の指導を受けると安心です。
  3. 運動と体重管理で病気の進行を遅らせる
    • 肥満のリスク:糖尿病、関節疾患、気道疾患の発症リスクを高める。
    • 無理のない運動:重度の心臓病のある子には散歩時間を短めに、腎臓病の子は脱水に注意しながら遊びを取り入れる。
                関節疾患のある子は、痛みの管理をしっかりして負荷の少ない運動から始めましょう。
    • 体型スコア(BCS/MCS)の活用:その子の適正体重や、適性の筋肉量をスコアにしたものです。
                          見た目や触診で筋肉と脂肪のバランスをチェックし、数値で管理すると効果的。
    👉適切な運動は、健康寿命だけでなく、長生きにも影響します。
  4. ストレスを減らす環境づくり
    • 猫の場合:上下運動できるキャットタワーや隠れ家を用意し、トイレの清潔維持で尿路疾患のリスクを減らす。
    • 犬の場合:静かに休めるスペースを確保し、急な騒音や来客ストレスを軽減。お散歩好きな子は、毎日のお散歩の時間を。
    • フェロモン製剤やサプリ(L-トリプトファンなど)も、不安軽減に役立つケースがあります。
  5. 最新医療とサポートの活用
    • 新しい薬剤や治療法:
      猫の慢性腎臓病ではラプロス(透析代替的な腎保護薬)など生存期間延長に期待できる治療薬が登場。
      心疾患では、強心薬・利尿薬などの適正使用が重要。重症になったときは、手術適応に関しても相談可能。
    • 在宅ケアの工夫:点滴や投薬が必要な場合、飼い主さんが自宅でできるように病院でトレーニングさせていただきます。
    • ペットと家族のQOL向上:病気の管理だけでなく、「生活の質」を重視したプランを立てることが大切です。

【まとめ】

1.  半年に一度の健診で病気の早期発見を。
2.  療法食や栄養指導で疾患ごとに合った食事管理を。
3.  体重・運動管理で病気の進行を遅らせる。
4.  環境とストレス対策で日々の生活を快適に。
5.  最新の治療法と在宅ケアで長期的にサポート。

慢性疾患は「治す」病気ではなく「上手に付き合う」病気です。
飼い主さんと私たち獣医療チームが一緒に取り組むことで、ペットの健やかな毎日を守ることができます。