猫の腎臓をやさしく守る「AIMとラプロス」

概要

「最近ちょっと元気がない気がする」「お水をよく飲むようになった」
──そんな小さな変化からでも大丈夫。まずはお話を聞かせてください。

腎臓の不調は、早く気づくほど手立てが増えます。オハナ動物病院では、国際基準(IRIS)に沿って、やさしい採血・尿検査・血圧測定・腹部エコーを組み合わせ、負担を減らしながら状態をていねいに見ていきます。

検査項目

  • 血液:SDMA・クレアチニン・FGF23など、腎に関する項目を数値でチェック
  • 尿:蛋白(UPC)や比重で尿の状態を確認
  • 血圧:高血圧は腎臓の負担になります。くり返し測って正確に評価します
  • エコー:腎臓の形や大きさ、結石やしこりの有無を観察します

7歳から年2回、11歳以上は年3〜4回のチェックをおすすめしています。

  • お水を飲む量/おしっこの量が増えた
  • ごはんの食べが悪い、体重が減ってきた
  • 吐く回数が増えた、毛づやが落ちた など

「気のせいかな?」くらいで大丈夫。早めの相談が、とても大切です。

検査でわかること

血液検査には、さまざまな項目がありそれぞれ重要な意味があります。
その中で腎臓に関して影響があるものに注意して、検査を進めます。

クレアチニン・SDMA・FGF23

クレアチニンは筋肉の代謝で自然にできる物質で、腎臓のフィルター(糸球体)を通って尿に出ます。
数値は筋肉量や脱水の影響も受けます。たとえば、筋肉が少ない高齢猫では低めに出やすく、逆に脱水があると一時的に高くなることも。
SDMA・尿検査(UPC/比重)・血圧・エコーのなど、いくつかの項目を観察します。1度だけの数値で確定することはできません。

  • 「少しだけ高いと言われた」
    まず脱水体調を整えて1〜3か月で再検、尿検査や血圧も一緒に確認します
  • 「昔より少しずつ上がっている」
     グラフで推移を見ながら、食事(リン管理)やお薬、通院間隔を調整します

SDMA(対称性ジメチルアルギニン)は体内のたんぱく質代謝で生まれる物質で、主に腎臓から排泄されます。
筋肉量の影響を受けにくくクレアチニンより早い段階で上がりやすいので、“隠れた腎負担”を見つける助けになります。とはいえ、脱水や一時的な体調で揺れることもあるため、単独では判断しません。クレアチニン・尿検査・血圧・エコーと合わせて総合評価します。

  • 「SDMAだけ高い」
    水分状態や同時の検査を確認して、数週間〜数か月で再検。変化の方向(上がる/下がる)を見ます。
  • 「クレアチニンは正常だけど心配」
     SDMAや尿検査、血圧を追加して“早めのサイン”がないかチェックします。

FGF23(線維芽細胞増殖因子23)は、骨から分泌されるリンのコントロール役のホルモンです。腎臓の負担が増えると、体はリンを外に出そうとしてFGF23が高くなることがあります。血液中のリン(P)がまだ正常でも、FGF23が先に上がるケースがあり、隠れたリンの負担を教えてくれる“合図”として注目されています。この数値が上昇している時は、リンを制限を開始する(療法食への切り替え)サインとして活用されます。

  • SDMAやCreがじわじわ上がってきたが、リンはまだ正常なとき
  • 蛋白尿や高血圧があり、進行リスクの把握をしたいとき
  • 腎臓食を始める/続けるタイミングの指標がほしいとき
  • FGF23が高い × リン正常
    リンの“隠れ負担”の合図 → 腎臓食の徹底、おやつ・リンの多い食材の見直し、再検:1〜3か月
  • FGF23が高い × リン高め
    リン管理を強化 → 食事の最適化、必要に応じてリン吸着薬を検
  • FGF23が改善
    ケアがうまくいっているサイン → そのまま継続しつつ定期チェック

※GF23はIRISステージの判定には使いません
あくまで“リスクの強度”や“ケアの優先度”を決める手がかりとして、他の検査と総合的に見ます。

尿検査は、腎臓の機能評価やステージ分類にとても役に立つ検査です。
その中で、慢性腎臓病との関連がある項目に注意して観察します。

USG・UPC

尿比重は尿中の固形成分の含有量を示します。

  • 猫はもともと濃い尿を作るのが得意です
    めやす:1.035以上なら“よく濃縮できている”サイン
  • 1.035未満が続くと、腎臓の濃縮力低下が疑われます(ただし点滴直後・多飲・利尿薬などでも下がります)
  • 朝いち尿や採水間隔をそろえると推移が比較しやすくなります
  • 1回の数字で決めず、SDMA/Cre・UPC・血圧・エコーとあわせて総合評価します
  • 低めと言われた
     体調・お水を飲む量・投薬を確認し、1〜3か月で再検
  • 点滴のあとです」
     一時的に薄まります。点滴前の採尿が理想です
  • トイレ砂から取った
    不純物で誤差が出やすいです。できれば清潔容器で新鮮尿、培養が必要なら膀胱穿刺尿

おしっこに含まれるたんぱくの量の“濃さ補正つき”指標
腎臓のフィルターからたんぱくが漏れていないかを見ます。

  • 値の目安(
    < 0.2:非タンパク尿(NP)
    0.2–0.4:境界域(BP) → 再検で推移を見る
    > 0.4:タンパク尿(P) → 持続していれば介入検討
  • UPCが高いときは、血圧や食事内容も合わせて確認します

  • 0.3くらいと言われた」
    水分状態や同時の検査を確認して、数週間〜数か月で再検。変化の方向(上がる/下がる)を見ます
  • 感染があると言われた
     SDMAや尿検査、血圧を追加して“早めのサイン”がないかチェックします
  • USGが低くてUPCは正常
    尿比重が低下する他の疾患を除外した上で、早期CKDを疑います。SDMA/Creやエコーと総合判断します

【治療】腎臓を守るための、未来への投資

腎臓を守る治療をすることにより、長生きできることを期待します。
進行予防を期待できそうな、選択肢をご提示します。
まだまだ研究が続いている分野ですので、新しい情報があればご提供します。

ラプロス(成分:ベラプロストナトリウム)は、血管を守る・広げる・炎症を抑える・血小板の固まりを抑える作用を持つお薬です。腎臓の毛細血管の血流を保つことで、腎臓の細胞を保護し腎臓病の進行を遅らせることを期待します。
主にIRISステージ2〜3の慢性腎臓病で、さらに食事(腎臓食)やリン管理、血圧・蛋白尿のケアと一緒に使うと効果が期待できます。

※ 東レホームページより抜粋、一部加筆

  • 副作用が心配
    最初の2−3日は注意深く様子を見ながら進めましょう。食欲不振や、血圧低下によるふらつきなどないか注意してください
  • いつから始める?
      IRISステージ2の慢性腎臓病から適応です。クレアチニンやSDMAを参考に判断
  • どのくらい続ける?
    基本は長期投与です。大きな悪化がなければ大丈夫です。長期で経過を観察しましょう

AIM(エーアイエム)は、体の“お掃除屋さん”を手伝うたんぱく質。腎臓が疲れたとき、いらないものを片づけて回復を助ける役わりがあります。猫さんでは体の仕組みの関係で、AIMがうまく働きづらいことがあり、腎臓病と関係しているのではないかと研究が続いています。

ニュースで見かける「AIMの薬」は、いま臨床試験(治験)の段階であり、現在は食事やサプリなどで補充する事で、効果が得られるか試みられています。

  • 今の段階では、研究段階ですが腎臓に対して、良い効果を期待してしまいます
  • 治療薬はまだ存在しませんが、IRISステージ1or2の慢性腎臓病の時にお勧めできる食事があります
  • ふだんの診療は、ガイドラインで承認済みの治療を中心に、AIMはオプションとして考えます

まとめ

腎臓病は 「いつ見つけるか」で結果が変わる病気です。
進行してからでは失われた腎組織は戻らず、できることは限られます。
だからこそ、症状が出る前に見つけることが、最大の治療。
早期なら、まだ働ける細胞を守り、進行を遅らせる手立てが増えます。
やっぱり鍵は定期健診
血液(SDMA・クレアチニン)と尿(比重・UPC)検査を軸に、コツコツと“推移”を追いましょう。
検診を「予定」ではなく「習慣」に。
次の健診日を、今日決めてはいかがですか?