猫の高血圧は、人間と同じように健康に大きな影響を及ぼす病気です。しかし、多くの場合は症状が出るまで気づかれにくいため、注意が必要です。ここでは、猫の高血圧に関する注意点と、治療・対策についてわかりやすく解説します。
高血圧の症状とリスク
猫の高血圧は、次のような症状を引き起こします。
- 眼底出血:目の奥で出血が起こり、失明の原因になります。
- 失神:脳や心臓への血流が不安定になると、一時的に意識を失うことがあります。
- 循環障害:血流が滞ることで、全身の臓器に負担がかかります。
恐ろしいのは、これらの症状が出るまで気づかれにくいことです。
特に「失明」や「失神」が起きてから発見されるケースも少なくありません。
高血圧の背景にある病気
猫の高血圧の裏には、いくつかの病気が隠れていることがあります。
- 原発性アルドステロン症
副腎の腫瘍や過形成でアルドステロンが過剰に分泌される病気。高血圧とともに**低カリウム血症(3.0mg/dl以下)**が特徴的です。 - 慢性腎不全
腎臓の働きが落ちることで血圧が上昇しやすくなります。高血圧と腎不全はお互いに悪循環を引き起こすため、注意が必要です。 - 甲状腺機能亢進症
シニア猫に多い病気で、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで代謝が異常に活発になります。これにより心拍数が上昇し、血管に負担がかかって高血圧を引き起こします。甲状腺機能亢進症は「体重減少」「食欲増加」「多飲多尿」などの症状とともに、高血圧や心臓病のリスクを高めます。 - 特発性高血圧
原因がはっきりしないタイプも存在します。
高血圧の治療と対策
高血圧が見つかった場合には、次のような治療が行われます。
- 血圧を下げる薬
アムロジピンやテルミサルタンが使用されます。特に、心疾患やホルモン異常を伴うケースで有効です。 - 抗アルドステロン薬(スピロノラクトン)
アルドステロンが高い場合に用いられ、低カリウム血症と高血圧の改善に効果があります。 - 心臓病に対する治療
高血圧により、肥大型心筋症のような状態になることがあります。今の段階では心筋症が判断できないため、まずは血圧を下げる治療を開始します。 - 甲状腺機能亢進症の治療
メチマゾールなどの抗甲状腺薬、ヨード制限食、または放射性ヨウ素治療が選択されます。甲状腺ホルモンが正常化すれば血圧も安定するケースが多いため、高血圧治療と並行しての管理が重要です。
飼い主さんができること
- 定期健診で血圧測定を受ける
特にシニア猫では、年に1〜2回の血圧チェックをおすすめします。 - 目や行動の変化に注意する
突然の視力低下、ふらつき、落ち着きのなさ、過剰な食欲などもサインです。 - 基礎疾患の治療を継続する
腎臓病や甲状腺機能亢進症をしっかり管理することが、高血圧の予防につながります。
まとめ
猫の高血圧は、失明や心不全といった深刻な合併症を招く病気です。
その背景には、腎臓病や副腎疾患、甲状腺機能亢進症といった基礎疾患が隠れていることも多くあります。
定期健診での血圧測定と、基礎疾患の早期発見・治療が、猫の健康寿命を延ばすために大切です。